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将来の生き方をどう描く?─「自分の仕事」の見つけ方@神戸市立工業高等専門学校

将来の生き方をどう描く?─「自分の仕事」の見つけ方@神戸市立工業高等専門学校

株式会社EXARS 飛田茂樹代表取締役による特別講義を開催

2025.07.01

2025年6月16日、神戸市立工業高等専門学校(以下、神戸高専)で、株式会社EXARS(以下、エクサース)の代表取締役・飛田茂樹さんによる特別講義が行われました。
オンライン開催となった今回は、電子工学科4年生が参加。ソフトウェア業界のリアルとこれからの働き方について語る飛田さんの熱い思いが、画面越しでもしっかりと伝わる内容でした。

ーー エクサースって、どんな会社?

講義の冒頭では、エクサースの事業紹介が行われました。

愛知県刈谷市に本社を置く同社は、自動車の安全性や快適性の向上に必要な車載用制御システムの開発・設計を中心に、ハードウェアやソフトウェアの設計開発などに取り組む会社です。

2002年に大手自動車部品メーカーであるデンソーのOBが設立し、高度な技術力に磨きをかけ、日本の自動車産業の発展を支える存在へと成長。トヨタ自動車をはじめとする大手グローバルメーカーとの強固な信頼関係を基盤に、安定した経営を続けています。そして2024年には、神戸事務所を新設し、さらなる事業拡大へと踏み出しました。

長年、車載開発を手がける同社は、近年では電気自動車の充電台装置や、自動運転を支えるDCM(データ通信モジュール)の開発など、次世代モビリティ分野にも注力しています。また、電力の「見える化」や自動制御を可能にするHEMS事業の立ち上げに関わり、製品化にも貢献。さらには、農業用収穫ロボットのソフトウェア開発や、工場の遠隔監視・操作を可能にする生産システムの開発も推進するなど、技術を通じてさまざまな分野に挑戦を広げています。

ーー 若いうちに身につけたい、“いい会社”を見抜く力

講義は続いて、ソフトウェア会社の仕事に関する話題へと進みました。

飛田さんいわく、ソフトウェア会社の役割は「コンピュータに面倒な作業を任せるためのプログラムを作ること」。その仕事はコツコツとした努力が求められ、一生勉強が必要だと説明した上で、「しかしこれはソフト業界だけの話ではない」と指摘しました。

また、国内の多くのソフト会社が人材派遣中心の体制であり、若いうちは仕事があっても、年齢を重ねると仕事を失うリスクもある現実を伝えました。

だからこそ、会社の名前だけで選ぶのではなく、「何をしている会社か」「そこで自分が何をできるか」を見極める力が重要であり、それを若いうちから身につけることが大切だと強調しました。

「自分のやりたいことを実現できるのが “いい会社”。技術者として入っても、誰にでもできる簡単な仕事ばかり任される可能性もある。そんな仕事に甘んじてしまってはもったいない。若いうちに“自分にしかできない仕事”をつくるため、今学んでいる基礎を一生懸命身につけてほしい」

未来を担う学生たちへの強い期待から、飛田さんの語調は次第に熱を帯びていきます。

ーー 将来の目標を持って、努力を重ねよう

続けて飛田さんは、ソフトウェア業界で長く働くために「専門職・管理職・営業職・経営者といった、どんな立場で生きていくかを若いうちから考えてほしい」と呼びかけました。実際に、ヤンチャでも社長になった友人もいれば、優秀だったのに課長どまりの人もいるという具体例を挙げ、人生における目標設定の大切さと継続的な自己研鑽の重要性を明言。「開業医が我が子を10年以上かけて医者に育てるように、自分自身も将来を見据えて努力を重ねるべき」と語りました。

また、エクサースは「でっかい夢を語れる会社」であり、学歴に関係なく、入社後に成長し、何をやりたいかを見つけた人が活躍していると紹介。「出世するかどうかは学歴ではなく、会社に入ってからが勝負。30歳、35歳、40歳で身につけておくべき技術や管理能力を意識していないと、必ず伸び悩む」と述べ、どの仕事も、“人間がつくっている”という原点に立ち返る必要性を訴えました。

「どんな業界や会社も同じで、目標も努力もなく、気楽に生きていけるほど甘くはない。だからこそ、今から自分の将来像を描き、どのような立場で、どんな仕事をしていきたいのか、明確にしておくことが大事。10年後、20年後にどう生きたいのかを考えてほしい」

「今のうちに先生にどんどん質問して、大いに勉強しよう。今すぐ会社を作っても構わない。新しい会社を立ち上げて、新しい技術に自分の力で挑戦してみようじゃないか!」

飛田さんの言葉には、自らキャリアを切り開いていく姿勢の大切さが込められていました。

そして、仕事に向き合う姿勢について、こんなメッセージを残しました。
「仕事とは、自分の“好き”をとことん追求すること。そして、人のためになることなら何でも積極的に引き受け、周囲から信頼される人になること」

飛田さんの力強い言葉に、学生たちは圧倒されながらも、その一言一言に耳を傾け、身を乗り出し聞き入る場面も見られました。

ーー 学生からの質問

講義の最後には質疑応答が行われ、学生から「新しいことを始めるのは、ハイリスク、ハイリターンだと思うか?」という質問も寄せられました。

これに対し、飛田さんは「当社は、地道にコツコツと会社経営に取り組む一方で、無理のない範囲で絶えず新しいことに挑戦している。それがハイリスク、ハイリターンかどうかは、正直よくわからない」と、率直に答えました。

でも、やる価値のあることに挑み続けるというマインドは大切にしたいといい、現在は、スマホを使って車にエンジンをかけたり玄関に自動で横づけしたりする技術の実現や、ゴミ収集車の収集作業を含めた完全自動化を目指しているそう。「こうした挑戦をハイリスク、ハイリターンという人もいるかもしれないが、どんな時も大きな目標を掲げ、努力を積み重ねる姿勢は持ち続けたい」と語りました。

ーー 講義を受けて〜学生たちの感想

特別講義を受けた学生たちからは、さまざまな感想が寄せられました。

「とても興味深い内容だった。中でも、“会社に入ってからも自主的に勉強していかないとキャリアアップはできない”という考えに共感し、その重要性を改めて認識した。就職後も自分の道は自分で切り開いていくことが大事だと感じた。今まで以上に勉学に励み、自分の価値を高めていきたい”」

「今取り組むべきことをアドバイスしていただき、勉強になった。何より話がおもしろく引き込まれた。“会社に入るのがゴールではなく、入ってから何をしたいか、何ができるのかを考えることが大事”という言葉が特に印象に残った。今後は主体的に学問に取り組もうと思う」

学生からは「楽しい特別講義だった」という声も聞かれ、大きな学びの機会となったことがうかがえました。

ーー 講義を通して、飛田さんが感じたこと

講義を終えた飛田さんは、まだまだ話し足りない様子で、学生たちへの思いを語ってくれました。

「私の話を聞いて、“先のことはまだわからないのに、何を言っているんだろう”と思った学生さんもいたかもしれない」と振り返りながらも、「それでも、人生に目標を持ち、新しいことに挑戦できる機会があるなら、迷わず飛び込むべきだと伝えたかった」と力を込めました。
さらに、「上司の顔色をうかがいながら仕事をするのではなく、自分が“黒だ”と思うことは、しっかり“黒だ”と言える信念を持ってほしい」と語りかけました。

最後に、「神戸高専を卒業する時に涙を流すくらい、勉強も遊びも思い切り楽しんで。そしてこれからは、グローバルに生きる力も身につけてほしい」と学生たちに熱いエールを送りました。

進路や将来に悩みながらも、自分の可能性を模索している学生たちにとって、今回の特別講義は自分自身と向き合う貴重な時間となったことでしょう。

<株式会社EXARS>

設立 2002年
代表者 代表取締役 飛田茂樹
事業内容 車載用制御システムの開発・設計(ソフトウェア/ハードウェア)、協働ロボットシステムの開発・教育支援、EV用充電装置の開発、DCMの開発など
所在地 
本社  愛知県刈谷市南桜町2丁目27番地 刈谷第1東海ビル 3F
神戸事務所 兵庫県神戸市中央区橘通1‑1‑12 行政ビル 303

URL https://www.exars.com/

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