東京に本社を置くグローバルセキュリティエキスパート株式会社では、企業向けにサイバーセキュリティに関する社員教育・エンジニア向け教育・コンサルティング・ソリューションをワンストップで提供しています。急速なDX化の広がりやセキュリティ意識への高まりを背景に、好調な業績を続けています。2023年９月には西日本支社を大阪から神戸へ移転し、さらなる躍進を狙います。
西日本支社長の三木　剛氏に、神戸進出の経緯やビジョンなどについてうかがいました。

サイバーセキュリティ対策は全企業の最優先事項

当社は2000年の設立時から、情報セキュリティコンサルティング・監査や脆弱性診断サービスを中軸とした事業を展開し、業界トップクラスの実績を持っています。セキュリティエンジニア向けの世界共通トレーニング・資格であるEC-Council国際認定資格を日本へ導入したり、企業に標的型メール訓練サービスを提供したりするなど、サイバーセキュリティの黎明期から専門人材の育成や情報リテラシー教育に力を注いできました。

近年はDXの推進に加え、サイバー攻撃の脅威が中堅・中小企業や個人にも身近になり、セキュリティニーズが高まっています。従来の情報セキュリティビジネスでは、外部からの不正なアクセスなどに対しセキュリティソフトによって防御策を講じるのが一般的でしたが、手口の高度化や巧妙化が進み、それだけでは太刀打ちできなくなりました。すべての企業がセキュリティ対策の強化や見直しを迫られていますが、日本では専門知識やノウハウを持つセキュリティ人材が圧倒的に不足しているのが実情です。

こうした問題に直面し、各企業ではセキュリティ業務に従事する人材を社内教育によって育てる動きが加速しています。また、国も一般社員が自身の業務に加えてセキュリティ対策に関する知識やスキルを身につける「プラス・セキュリティ人材」の育成を積極的に推進しており、セキュリティは専門家だけに任せる時代ではなくなってきました。

セキュリティ教育事業を強みに急成長

当社では、サイバーセキュリティのコンサルティングや実装・運用の支援、従業員へのセキュリティ教育、国内外の拠点でサイバー攻撃が発生した際の緊急対応や原因究明などをトータルでサポートしています。とりわけ、自社で培ったサイバーセキュリティの知見やノウハウを惜しみなく提供する教育サービスを強みとし、積極的な市場開拓に取り組んできました。その結果、西日本支社を設立した2019年は数社だった関西の取引先が、４年間で300社以上に増大し、業績は急激な右肩上がりを続けています。現在はセキュリティエキスパートの人材派遣も行っており、主要な事業の一つに育ってきました。また、サイバーセキュリティ分野への就職を希望する若者も増加傾向にあり、ホワイトハッカーを養成している神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校へカリキュラムを提供するなど、若手人材の創出もバックアップしています。

神戸進出を決定づけた助成金制度

事業の拡大に伴い従業員も増え、大阪の淀屋橋に構えていたオフィスが手狭になったので、拡張移転しようということになりました。最初は大阪市内で場所を検討していたのですが、私が前職で神戸市内の企業に勤務していたことから、愛着のある神戸も候補地に含めることにしたのです。

西日本支社は名古屋から沖縄まで幅広いエリアを管掌しているため、各地へスムーズに移動できるアクセスの良さは拠点に求める条件の一つです。その点において、新幹線の駅や空港に近い神戸のロケーションは大変魅力的でした。加えて、神戸ハーバーランドには2010年まで情報セキュリティのエキスパートを育成する米カーネギーメロン大学の日本校があったので、ストーリーを描きやすいと思ったのです。また、当社ではサイバー攻撃の標的にされやすい医療分野への事業強化を目指しており、その発信地として先端医療産業特区に認定されている神戸はまさに適地でした。

さまざまな好条件が揃う中で、最終的に移転を決定づけたのは、オフィス賃料等補助制度があったことです。神戸市の手厚い助成金制度は本当にありがたく、本社への十分な説得材料になりました。今後は神戸で人材採用を予定しており、大阪から神戸へ従業員の異動も計画しているので、その際はぜひ雇用加算の制度も活用させていただきたいと思っています。

駅近の人気物件に出合えた良縁を大切に

西日本支社が入居するミント神戸は、近隣のオフィスビルの中でも１、２を争うほどの人気物件で、常に満床だと聞いていました。ところが、私たちが物件探しを始めたタイミングで、たまたま空きが出たとの情報が入ったのです。内見すると天井高があり、眺望も良く開放的。居抜きで使える清潔な空間も気に入りました。唯一の障壁が賃料の高さだったのですが、神戸市経済観光局企業立地課でオフィス賃料等補助制度について説明を受け、迷いが晴れました。このご縁は本当にラッキーとしか言いようがありません。

ミント神戸は各線三ノ宮駅からの動線が良く、滋賀や東大阪など遠方に住む従業員も通勤に便利だと喜んでいます。気軽にオフィスへ立ち寄ってくださるお客様も多くなり、コロナ禍を経て直接顔を見ながら話ができることのありがたさを噛み締めています。こうした交流を通してお客様と心を通い合わせ、距離的な近さも実感していただき、「緊急時にすぐ駆けつけてもらえる」という安心感につなげていきたいです。

神戸をサイバーセキュリティのメッカに

当社では神戸進出を機に「神戸をサイバーセキュリティのメッカにする」という新たなビジョンを掲げました。ハッキングイベントなどエンジニアたちが興味・関心を持つ多様な催しを開催することで地域を盛り上げ、近い将来神戸で新たなサイバーセキュリティのベンチャー企業が立ち上がるような動きが出てくれば嬉しいですね。

このような思いに、私が長年サイバーセキュリティ対策アドバイザーを務めてきた兵庫県警察も賛同してくださり、新オフィスの開所日に県内企業のサイバーセキュリティ対策の自衛力強化等について連携・協力する協定を締結しました。

神戸には世界に誇るスーパーコンピュータ「富岳」があります。また、米マイクロソフト社の世界6拠点目となるMicrosoft AI Co-Innovation Labも開設され、世界中からエンジニアたちが集うすばらしい環境が整っています。こうした地域の優位性をもっと強くアピールし、神戸市やポートアイランドがIT特区に認定されれば、より一層街は活気づくのではないでしょうか。