事例インタビュー
2021.02.25
神戸市では、ITを活用したスタートアップ(成長型起業家)の育成支援やIT産業等の誘致に取り組み、優良・成長企業の集積が進んでいます。
その中の企業のひとつがWebサイトやモバイル、アプリなど広範囲にわたる企業のデジタルマーケティング支援・システム開発を行う「株式会社メンバーズ(以下、メンバーズ)」です。そのメンバーズで働く社員が講師となり、神戸市立工業高等専門学校(以下、神戸高専)・電子工学科の学生を対象とした特別講義が行われました。
講義のはじめに神戸高専の若林茂先生より、神戸市内に立地する最先端のIT企業の講義を通じて、学生たちに将来エンジニアとして働くイメージやIT業界の魅力を知ってもらうことを目的としているといった趣旨が語られました。
また、数日前に緊急事態宣言が出たため、教壇ではなくオンラインでの登壇となりました。メンバーズの人事担当・立石朝顕さん、神戸高専出身の東野草太さん、神戸オフィスで働く溝上彩さんによる講義です。今回はその様子をお伝えします。
ITエンジニアの現場とは?
「メンバーズは1500名の社員のうち約200名ほどが高専出身で、日本で7番目に高専生を採用している企業なんです。」という立石さんの言葉から始まった本講義。
メンバーズの拠点は全国にありますが、緊急事態宣言後、全員自宅からリモートで仕事しているものの、問題なく働けていると立石さんは語ります。
クライアントは誰もが知っているような都市部の大手企業が多いものの、そもそもメンバーズでは離れた拠点のメンバーと、リモートワークを前提にひとつのチームを組むのが当たり前なのでビデオチャットでやりとりする文化が根付いているのだとか。
立石さん「具体的な職種の話をしますと、高専出身者の1年目の多くはエンジニアとして働きます。エンジニアにも2種類あり、1つ目はコーダー(フロントエンドエンジニア)と呼ばれる職種です。
「こんなウェブサイトにしたい」とデザイナーが考えたビジュアルを、ブラウザに表示されるようにHTMLやJavascriptなどを使ってサイトを構築していくのがコーダーの仕事です。趣味と仕事の違いは複数人で開発していくこと。社内や社外の人にも自分の書いたコードが見やすいかなど、ほかのチームのメンバーとの連携が大事になります。」
立石さん「2つ目に裏側のシステムをつくっていくバックエンドエンジニアの紹介します。Python、Ruby、Perlなどのプログラミング言語を使いますが、研修をしっかり行うので今知らなくても大丈夫。また、アジャイル開発を採用しています。」
立石さんは将来的に両職種は融合するだろうから、両方好きになってもらえたらうれしいと語りました。また、拡大していく事業分野についても触れました。
立石さん「当社ではDX(Digital Transformation:DX)を推進する新しい部署をつくっています。クライアントのビジネスそのものなど、デジタルをつかってビジネスモデル自体を転換していく考え方です。」
例えば単に紙の書籍をPDF化しましたよというのはDXではなく、今の時代に合った定額サービス、サブスク等、新たなサービスそのものをつくることが社会では求められていて、それを実現できるエンジニアの価値が高まっていると言います。
「社会の状況についていけるように働きながら学ぶことが大事!」と熱く語られていたのが印象的でした。
現場社員による仕事内容紹介
<エンジニアの経験談>
ここからは現場で働く社員による業務紹介です。まずはエンジニアの東野草太さんから。
東野さん「私は神戸高専の電子工学科を卒業し、2019年4月に入社しました。業務分野はマーケティングオートメーション(MA)という分野です。MAは簡単に言うと顧客がどんなアクションをしたかを記録し、最適なコンテンツを最適なタイミングで届ける仕組みです。
例えば誕生日のお客様にメールを配信する場合に、
1 誕生日データを抽出する
2 事前に作成したメールを配信する
3 開封数やクリック数の結果を集計する
この123の手順をすべて自動化するなど、ユーザーに最適化されたマーケティングと分析を自動化するようなプログラムを作っています。」
東野さんによれば、入社後に神戸で2週間ビジネスマナーやデジタルマーケティングの研修をして、東京で1週間ほど自身のキャリア形成について学ぶ機会があり、最後に仙台で4週間、フロントエンド研修、デザイン研修をしたそうです。
<デザイナーの経験談>
続いては神戸拠点で働く溝上彩さんの業務紹介です。
溝上さん「学生時代はゲーム開発系の専門学校に通っていました。メンバーズに入社後の1〜2年目の業務はアパレル系企業サイトの運用やチラシ制作、サイトのリニューアルを担当していました。3年目からは銀行のサイトにも関わるようになり、神戸に異動しました。アパレルとは違う運用方法だったのでゼロからのスタートでした。これまで画像制作やHTMLを扱うだけでしたが、ディレクターの仕事を任せてもらえるようになったのもこの時期です。
3〜4年目は銀行のサイトと、コンビニの銀行事業のサイトも担当しています。今はメインディレクターとして働き、最近は売上をつくるために提案も行っています。提案書の作成をしたり、提案する上での調査をするようになりました。エンジニアもデザイナーも社内外と調整する機会が多いので、学生の方は今から話すことに慣れておくと強いですよ。」
3人のトークセッション
ここからは3人の働き方やスキルの学び方についてのトークセッションとなりました。
立石さん「私は人事担当ですが、それまではエンジニアとして1週間のスケジュールが決まっている仕事をしていました。特に私の業務の場合、水曜日が忙しかったですね。朝、クライアントからコーディングの指示書が届き、一斉に開発作業をします。昼にクライアント側のディレクターさんにチェック依頼を投げると午後に手が空くので画像制作のお手伝いをしていました。チェックが戻ってきたら、ステージングというサーバーにコーディングしたファイルをアップロードする。木曜日は私たちが提案を考えていく時間でした。」
東野さん「MA運用で言うと、メールの文面を作成したりとか、配信者を抽出していくSQLを書いたりとか。クライアントとの定例では進捗状況を共有しています。今は出社していないですが、チーム内でGoogle Meetというビデオ会議を常時接続して、朝会と夕会や、少し雑談などもしています。すぐ隣で仕事しているような感覚ですね。」
溝上さん「私の場合は今いる部署が定常的なものがなく、お客様との調整や、資料をつくっていることが多いです。1年目の頃は『いったいディレクターは何をしているんだろう?』と思っていましたけど(笑)、実際に自分がディレクターの立場になってみると、本当に地味な作業だけど、デザイナーやエンジニアが気持ちよく仕事をするために必要な仕事はたくさんあり、それらだけで1日が過ぎることもあります。」
学生からの感想
その後、質疑応答を経て講義は終了となりました。
参加学生からは「他の人が見て分かりやすいコードを心がけているということがとても刺さった。今後のコードを書くときはしっかりと意識したい。」など、チームで実際に開発することのイメージが掴めたようです。また、「現状のスキルで考えず、将来どうなりたいか」を主軸に働き方を考える、という言葉に感銘を受けたとの感想もありました。
学生からはなかなか見えづらい、実際のエンジニアやデザイナーの仕事を垣間見える本講義は、これから社会に出る高専生にとって貴重な機会となったようです。
神戸高専での講義を終えて
神戸オフィスが2018年10月に立ち上がってから、神戸市役所との共同ワークショップや特別講義を実施してきたメンバーズ社。
神戸オフィスへ異動した溝上さんは、講義終了後、神戸の魅力を下記のように語ります。
溝上さん「東京や大阪程の人ごみもなく、オフィス近辺には娯楽施設やお店がそろっている点で、とても丁度いい場所です。適度な人口にオフィス回りの充実したお店は、働く以外のモチベーションをとても向上させてくれますね。
そして、三ノ宮は多様な交通機関が集結しているので、交通がとても便利。空港や船も近いので、関西圏はもちろん九州や東京にも行きやすいと感じます。」
また、今回の特別講義の場は非常にありがたかったと語るのは立石さん。
「会社として神戸高専での特別講義は例年実施していますが、今年度は完全オンラインによる特別講義。コロナ禍の難しい状況の中で、こういった場をご提案頂いた神戸市や神戸高専の皆様には本当に貴重な機会を頂けたと感じています。」
今後も神戸市では、ITコンテンツ産業の集積を図るために、進出企業への補助制度にとどまらず、今回の神戸高専の特別授業のように、高専等での進出企業やエンジニアとして働くことの魅力発信など、地元教育機関や企業との連携を進めていきます。
【株式会社メンバーズ】
設立:1995年6月26日
代表取締役 兼 社長執行役員:剣持 忠
事業内容:デジタルマーケティング事業
所在地:
■ウェブガーデン神戸
〒651-0083 兵庫県神戸市中央区浜辺通5丁目1番14号
神戸商工貿易センタービル 16階
■東京本社
〒104-6037 東京都中央区晴海1丁目8番10号
晴海アイランド トリトンスクエアオフィスタワーX 37階
(参考)企業による出張講義
・株式会社メンバーズエッジ「育て!神戸のエンジニア」@神戸高専
・株式会社モノビット「ゲーム業界でエンジニアとして働くための実際」@神戸高専