株式会社KURASERU
2018.11.16
介護が必要な方と介護施設をマッチングして病院で働く医療ソーシャルワーカーの業務を支援する。
昨年10月に創業したばかりの神戸発スタートアップ企業「KURASERU」はソーシャルインパクトの高さと将来性で注目を集めています。
CEOの川原大樹(かわはらだいき)さんと、COOの平山流石(ひらやまるい)さんの創業者コンビに、起業からのこれまでと今後の展望を聞きました。
CEOの川原大樹(かわはらだいき)さん
COOの平山流石(ひらやまるい)さん
KURASERUのルーツは大学のゼミにあり!
── CEOの川原大樹さんと、主にテクノロジー面を手がけるCOOの平山流石さん。おふたりは大学時代の同級生なんですね。
川原 大学時代のゼミ仲間です。すごく倍率が高い人気ゼミ。平山くんは優秀でしたけど、僕は滑り込みセーフでした。
平山 いやいや。川原はゼミの面接のエントリーシートに「長所は有言実行、短所は時間にルーズ」って書いていて、面接に本当に遅刻してきたという伝説を持つ男です(笑)。それでも合格したからすごい。
── 経営をテーマにしたゼミですか。
川原 そうです。実は僕、高校時代は高知で寮生活をしながら野球をやっていました。最初はプロ野球選手志望でしたが「自分の実力ではお金にならない」と悟って、ビジネスで勝負したいと思うようになりました。
平山 僕も川原も実家が会社を経営していて、最初から起業家志向がありましたね。僕は学生時代からeスポーツの大会をホストしたり、プロチームのウェブサイトを作ったりと、色々なビジネスに関わっていましたし。
── 医療や介護の情報プラットフォームを作るという『KURASERU』のアイデアを出したのは
川原 僕です。「介護」に目をつけたのは、日本で一番ペインがある(困っている)領域だと思ったから。最初は別のビジネスプランで「高齢者のコミュニケーションの活性化」を狙ったんですが、大学の先生や介護施設の施設長に説明しても「事業としての必要性が低い」とバッサリ切られました。まあ、今から考えれば自分でも全然ダメでしたね。それが24歳ぐらいの時。この頃、介護業界の方に「この業界は現場を知らないと理解できない」と言われたので、まずは介護施設で働くことにしました。
── ビジネスのタネを探すためですか。
川原 そうです。最初から「3年間だけ」と決めて働きました。給料をもらいながらビジネスプランを考えられるなんて最高でしょ(笑)。その3年間で、医療サイドと介護サイドのコミュニケーションの悪さに気づいたんです。医療と介護は近い業界なのに専門用語が違う。次は病院のことを勉強しなければと、病院に自分ができることをアピールして「雇ってください」と頼みました(笑)。
── 病院ではどんな仕事を?
川原 地域連携室を立ち上げて、医療ソーシャルワーカー(病気や障害などを抱える人やその家族の持つ不安や困りごとの解決を支援する専門職)として働きました。その病院には病床の稼働率が低いという問題があったので、それを解決するため、病院の機能を地域ニーズに合わせて変えて、それを知らせる営業活動を強化しました。
── 成果は上がりましたか。
川原 稼働率が大きく上がりました。ここでも3年ほど働いて、次は訪問看護事業所を立ち上げました。こうして介護施設、病院、在宅医療を一通り経験して気づいたのが、これらの施設には、同じ患者が行き来する機会が多いのに、共通の情報プラットフォームがないということだったんです。「うまくテクノロジーを入れたら解決できるのに」と考えているうちに「平山がいればビジネスにできる!」と気づいて、平山に声をかけました。
平山 僕は4年生で大学を中退して、会社役員をしたり、いろんな会社のシステムを作ったり、BtoBビジネスを立ち上げたり、幅広い事業を手掛けていました。でも漠然と何か違う気がしていて。そんなとき川原が「介護の問題を解決したい」と言ってきたので「やろう!」と即答しました。ソーシャルインパクトがある仕事がしたかったんです。
スマホのように気づいたら必要不可欠な文化になっていた
それぐらい自然なサービスにしたい
── それが、KURASERU誕生の瞬間ですね。
川原 それが去年の8月です。10月には会社の登記を完了して、2か月ぐらいで会社ができちゃいました。1年後にはサービスがローンチして、『KGSG(神戸グローバルスタートアップゲートウェイ)』に採択されました。僕たちのサービスはパブリックな側面が強いので、行政に認められたのはありがたかったですね。
(注:『KGSG』は2016年から2017年の2年間、神戸市が5期にわたって実施したアクセラレーションプログラム。KURASERUは第5期に参加。)
── すごいスピード感ですね。
平山 ここまでスムーズにスケールできたのは、やはり社会に必要な事業だったからだと思います。福祉の市場はこれから確実に伸びますし、誰かがやらないといけない。
川原 僕はビジネスアイデアそのものにはそんなに価値がないと思っていて。今も頭の中には色んなアイデアはあるけど、どれも自分ひとりじゃ実現できません。僕が投げたボールを拾う人が要る。
平山 すごい。天才ファウンダーっぽい(笑)。
川原 いやいや、だから、クラセルは平山がいなかったら絶対に実現していないんです。
── 神戸市内の病院、介護施設には、既にかなり浸透していますね。
平山 そうですね。ただ、福祉業界はまだまだ電話やファックスが普通という業界なので難しい面はあります。
川原 そもそもパソコンが1台しかなかったりするのでメールすら使わない。そういう環境をIT化するのは、大げさにいえば「文化の書き換え」です。でも、それを自然に、できるだけ優しく変えるのは、僕らの腕だと思います。「気づいたら変わっていた」ぐらいの。できるだけ現場のオペレーションを変えず、でも便利になるように配慮した使いやすいサービスにしています。
── 類似サービスは他にないのでしょうか。
川原 似たようなサービスはなくはないですが、医療・介護の連携は複雑なので、現場を理解せずにシステムを作ってもかゆいところに手が届きません。その点『KURASERU』は現場の経験を生かしているので内容に自信があります。逆に、競合が出てきた方が、僕らのサービスの使いやすさが分かってもらえるんじゃないかな。
── 現在は神戸市内だけのサービスですが、やがて全国に拡げるのでしょうか。
川原 はい。すでに5~6エリアで同様のシステム立ち上げの話が進行中です。
── シリコンバレーのVC、500Startupsから資金調達を実現したことでも注目されていますね。
平山 直接話が来て会いに行ったら、1時間ぐらいで決まりました。資金面だけでなく、採用面や広報面でも、強力にバックアップしてもらっています。
── それだけ将来性があるということですね。これまでを振り返っていかがですか。
平山 いいと思ったことを何でもすぐ行動に移したのがよかったかな。
川原 たまたま大学の同級生に、同じベクトルでビジネスを動かせるビジネスパートナーがいたことはラッキーでした。普通、経営と技術って対立しがちなんです。「ITなんかどうでもいい、現場はこうや!」みたいな。でも、それがない。意見の相違があってもケンカにならない。
平山 どっちが正しいとかじゃなくて、あくまで「問題解決」が目標だからね。ちゃんと役割分担ができているし。2人ともバカだから気が合うし(笑)。
川原 立ち上げの時、2人ともすでに自分で起業・経営の経験があったのもよかった。波長が合うんですよね。
── 神戸は立地場所としていかがですか。
川原 自分自身の生活基盤が神戸なので、ネットワークがあったのが一番のメリットですが、都会すぎず、田舎すぎず、環境がいいし、都市のサイズ感が実証実験をするにもちょうどいい。あと、東京より格段に固定費が安いのがスタートアップにとってはありがたいです。
── これから神戸でビジネスの立ち上げを考えている人にメッセージがあれば。
平山 僕たちもまだ発展途上ですが、投資ラウンドのシードからシリーズAあたりのフェーズについて、貴重な体験ができたので、リアルなプロセスを知りたい人はぜひ話を聞きに来てほしいですね。
川原 僕たちも神戸が大好きなので、神戸発のサービスをどんどん広げたい。情報発信にも力を入れていきたいと思っています。
■誰もが暮らしたい場所でクラセル世の中に
KURASERUで日本の医療介護システムをより良くしたいエンジニア、デザイナーただいま募集中です!
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■イノベーションを創発 神戸市のスタートアップ支援
<株式会社KURASERU>
設立 2017年10月
事業内容 介護が必要な方と介護施設のマッチングサービスの提供
所在地
■本社/〒650-0033 兵庫県神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート8F