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今、神戸にはどのような人たちが集まっているのか?(神戸電子専門学校 校長 福岡 壯治氏インタビュー)

今、神戸にはどのような人たちが集まっているのか?(神戸電子専門学校 校長 福岡 壯治氏インタビュー)

事例インタビュー

2021.03.30

国内でもっとも長い歴史を有するデジタル技術の教育機関として、幅広い専門領域にエンジニアを数多く輩出してきた「神戸電子専門学校」。現在はクリエイティブ・エンジニア育成へと舵を切る同校の校長、福岡 壯治氏にインタビューを行いました。

「デジタル技術と好奇心で世界はほんまに変えられる」と話す福岡氏。

校長を務める傍ら、自分たちの手で神戸を変えていこうとさまざまな市民活動を続ける、街のキーマンでもあります。市民発動、時には市も巻き込んだ言わば実験的な取り組みを数多く手がけている福岡さんに、「ITやクリエイティブ人材にとっての、神戸の魅力」とはなにかを、お聞きすることができました。

ーー まずは神戸電子専門学校についてお聞かせください。

福岡 壯治(以下、福岡氏):
本校はデジタル技術とその活用分野を中心に8分野、19学科1研究科を設置する総合学園です。

具体的にはITや情報工学、情報ビジネス、ゲームソフト、グラフィックデザイン、3DCGアニメーション、デジタルアニメ、サウンドクリエイト&テクニック、声優、建築インテリアデザイン、インダストリアルデザインから日本語領域まで、2年制学科を中心に4年制までと多岐にわたります。ITの専門職大学院 神戸情報大学院大学も併設しています。

指数関数的な技術進化による社会変化、言わばAI時代に対応する教育への改革を2013年から着手、国の2020教育改革に先んじた取り組みを行っています。仕様書通りのものが「造れる」上に、多様な価値観との触発で得たアイデアを練り込んだものが「創れる」スペシャリストを「クリエイティブ・エンジニア」と規定し、学科共通の人材育成像としています。

ーー クリエイティブ・エンジニア教育の実績と中身を教えてください。

福岡氏:
まずエンジニア教育ですが、学科毎に追いかける専門技術をある程度絞り、そこでトップになることを目標として来ました。

たとえば建築分野でいうと、CGパースによる設計プラン表現に注力しており、東京オリンピック・メインスタジアムのCGを描いたのは隈研吾事務所に就職した卒業生になります。テレビ東京の50周年事業『SPACE BALL』(360度星空に包まれるプラネタリウム)では、坂本龍一さん作曲の18.3chサラウンド(立体音響)化をサウンドクリエイト学科の学生チームが担当しました。IT分野はLinux によるインターネットサーバ技術にフォーカスし、海外との交換授業も積極的に行って来ました。

次にクリエイティブ・エンジニア教育ですが、技術進化による業務自動化の影響に左右されない学科ごとの「コア技術」追求をベースに、学科や学校を超えた「共創」経験を掛け合わせていくのが現在のカリキュラムスタイルとなっています。

最近では情報処理学科内設置のWebエンジニアコース(2021年度からはAIシステム開発学科)が、神戸市の「withコロナKOBE応援プラットフォーム」事業を受託。市職員と1年生が文字通りの共創(Co Creation)でもってシステム要件整理とWeb開発を行いました。

ーー 実際に、神戸で学ぶ若者を数多くみてきたなかで、今の時代の就職についてどのような流れを感じますか?

福岡氏:
これまでは”まずは大企業”、“とにかく東京へ”という指向が強かったと思います。ただ学生達にそもそも何のために働くのかをよくよく問うてみると、“自分や回りの生活を豊かにする”ためとなります。感度の高い学生は、自分達が住む地域の生活をハックしていくということに、少しずつ目が向いてきているように思います。

企業は、探究心と技術力を兼ね備えた人材を雇用したいと考えておられると思います。これまでは大都市圏から自社のブランド力、待遇面、スキルアップを中心とした環境面などを打ち出す事が多かったのではないでしょうか。これからは、前述のような優秀人材は北米や欧州のように、生活環境条件の良い地方都市に点在していくと考えます。そのため、今後はそうした動態を前提とした拠点計画が重要になってくるのではないでしょうか。

神戸は学ぶ場所も多いため、学生もまた多い。そして、入学を期に神戸で生活をはじめる人たちも少なくはありません。学生時代を過ごした街に愛着を感じ、卒業後も住み続けたいと思う人は特に増えています。そうした点から、神戸市に目を向けるというのは手前味噌ながら、悪くはないように思います。

また、神戸には今後、ニューエリートと呼べるようなおもしろい人たちがどんどん集まってくる可能性を感じていますので、そういった点でも注目すべき街なのだと思います。

ーー おもしろい人たちですか?

福岡氏:
そうです。神戸では2015年あたりから、市民発動でもってまちの面白みや心地よさを増大していく活動が活発化しています。

私が関わっただけでも、市役所南側東遊園地の芝生化、未来都市を構想するクロスメディアイベント「078KOBE」、ドレスコード白のクリエイティブ・イベント「神戸ホワイトディナー」、市長を交えた市民のクリエイティブ論議「神戸クリエイティブ・フォーラム」、阪急神戸三宮駅前にあるさんきたアモーレ広場・サンキタ通りの市民活用などがあります。市民がまちを所有する感覚をもち、なかば実験的にWANTS(欲求ベースのデザイン、社会課題解決のもと)を実現しています。

北米はサンフランシスコ、シアトル、ポートランド、オースチン、欧州はベルリン、バルセロナ、アムステルダムなどに見られるように、技術活用とその生活モデルの上質化に勢いのある都市には、前述のようなグラスルーツ(草の根)的な市民活動の本気度が高いという共通項があると思います。

ここ最近で働き方がずいぶん変わってきましたよね。そのなかでも一番大きな点が、働く上で“場所に縛られなくなった”ことではないかと思うんです。そんな中で、新しい基準でのエリート達は何を求めているのでしょうか。いかに日々の生活を豊かにしていくか、またそこへ向かう動きにいかに参画できるのかといったようなことが重要になっているように思います。

ーー どこでも働けるからこそ、プライベートが有意義になる場所を選ぶのでは、ということですね。

福岡氏:
そうした点では、神戸は山があり海があり、おいしい食材が豊富に集まる、コンパクトシティとして最高に良い環境。食材の良さに魅せられて神戸で店を続けている、というオーナーシェフもたくさんいらっしゃいます。

またある意味全ての基本となる水ですが「中央区で蛇口をひねれば、世界に誇る布引の水が出てくるとなれば、名だたるIT企業が世界から移転してきますよ」といったことも提言しています。

ーー 新しい風を受け入れるおおらかさ、みたいなものも感じますね。

福岡氏:
そうですね、進取の気風といいますか。技術、才能、寛容性が都市発展の3要素と言われますが、全国的にこの寛容性が下がっているように感じます。そうした中、その歴史背景からか神戸は、この寛容性の度合いは高くに位置づけているように思います。

異国情緒漂う元町の旧居留地は、世界を旅してきた外国人と当時の神戸市民が手に手をとり、世界のどこにもない実験的かつ先進的な街を、との思いでカタチ創っていったそうです。そうしたマインドが今も生きているのかもしれません。

街や人に、イノベーションやアイデア、そして実験を受け入れる度量があります。国内さまざまな企業の皆さまにはここに価値を見いだし、神戸に目を向けてもらいたいですね。神戸市での起業や事業所の開設などを行うメリットは大きいと思います。神戸電子専門学校もあることですし(笑)。

神戸はこれからスマートシティ化していくでしょう。ただセンサーを街中に100万個埋め込んで万歳といったことにはならないと思います。市民が個人情報をどう融通しあい活用していくのか、またそうしたなかから市民の新たな生業を創出していけるのか、といったことにもチャレンジしていくでしょう。

ーー 神戸市に対しては、どのような取り組みを望まれていますか?

福岡氏:
場や、サービス、システムそしてそこで流通するデータにいたるまでを今の延長線上でどんどん開放していって欲しいですね。市民の実験マインドを受け入れた小さな実験の主導や協働が増えてきているので、是非それらの加速や増大化をお願いしたいところです。

これからは、SDGsの達成が求められ、かつ発達したAIが世界を変化させるシンギュラリティ(技術的特異点:垂直に近い上昇カーブを描く技術発達)も本当に起こるかもしれません。まさにVUCAーー予測不能な時代で、誰も先は見通せない。WANTSや課題を丁寧かつ迅速に実験し、確かめていくしかないと思うのです。

変化は終わらず加速する、実験も終わらず増えていく。となると市民、市役所の皆さんにより重要なのは、その共通目標の達成ではなく、それを実現するため、本当に面白いと思える実験を選択し続け、実践し続けていくことなのではないでしょうか。
東遊園地の芝生化も実験でした。年末のイベント等で剥げてしまうんですが、それでもやろう、ここから神戸を変えようと、このアイデア・実験にのってくれた、これにはとても感謝しています。

神戸は向かっていると思います。あらゆる人が活躍できるまちへ。

神戸電子専門学校

所在地 〒650-0002 兵庫県神戸市中央区北野町1-1-8
URL https://www.kobedenshi.ac.jp/

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